

オペル社はアメリカのGM傘下となることで倒産の危機を乗り越えている。1886年に、ドイツ中部のシュツットガルトとマンハイムで各々個別にガソリンエンジン付き自動車を完成させていたゴットリープーダイムラーとカールーベンツが興した自動車メーカーであった両社は、1920年代の半ばにはドイツのマーケットでは一位と二位を分け合い、ヨーロッパ全体の中でも屈指の規模を持つ大メーカーになっていた。もちろん、このような発展の大基となったのは、第一次世界大戦時の大幅な軍需生産によるものであったのだが、戦争終結により、それまでの過大な投資を維持することは難しくなっていた。特に、ヨーロッパでは一部の金持ちや社交界などを顧客としていた大型高級車の市場は失われ、多くの高級車メーカーは消滅した。好むと好まざるとに関わらず、小型実用車生産への転換は必須となったのである。合併により、製品名をメルセデスーベンツとしたダイムラー・ペンツ社は、相次いで小型実用車を発表した。
スパイダーのイメージを際立てるためか、ニース周辺に設けられた試乗コースはさすがにこのクルマの秘めたる性能を躊躇なく引き出すには狭い道のりだった。が、それでも走りはじめてまずわかるのは、クーペモデルにも増しての乗り心地の良さだ。高剛性のアルミフレームゆえにクーペで稀に感じられる鈍い減衰感は、屋根が抜けたことによりほとんど気にならない。と同時にしなり効果も現れているのだろう、突っ張ったようなリアクションも影を潜め、波状路のような連続した凹凸にでも出くわさない限りは、至極快適なライト感を供してくれる。今回の試乗では、はじめてオプションのマグネティックライドレス仕様も試すことができたが、この決め打ちのアシの出来が実に秀逸で、サーキットペースでもない限りはマグネティックライドの必要性をまったく感じなかったことは密かに付け加えておきたい。ただしその好印象には、バネ下重量が大きく軽減されるカーボンセラミックブレーキシステムが付与していたことも間違いない話だ。ブレンボとの共同開発となるこのブレーキはガヤルド系と同様、中高速域では抜群のフィーリングと制動力を発揮する反面、低速域でのピーキーなタッチが気になるもので、今回のモデルでもその癖は取り去ることはできていなかった。しかし、これに関してはチーフエンジニア曰はく「高額なオプションを選択したユーザーに納得してもらえるよう、あえてレーシーなセッティングにしている」という。